本文へ移動

片山衣料のブログ

東京の某制服販売店の遅延騒動について思うこと

2022-04-07
制服業界としてあってはならない、入学式までにご家庭に制服が届かないことが4月テレビやSNSで取り上げられています。その某制服販売店以外にも最大手メーカーでも遅延がネットニュースに載り、当社も制服業界に身を置くものとしてがっかり、と共に危機感を持っています。

昨年度は特にLGBTQの流れで制服のモデルチェンジが全国的に相次ぎましたが、その変更までのスパンが大変短い学校が多く10月~11月くらいから不安視はされていました。当社取扱校でも他社主動のモデルチェンジがあって制服の仕様が決まったのが昨年の11月頃、しかも当初の採用生地から変更依頼がありその時点から原反(生地)を染めていくという流れでした。通常原反の製造には3か月程度はかかるので今年の2月くらいまでは縫製に取り掛かれず採寸見本もギリギリで(多めに製造したくても原反製造にも縫製にもキャパがあるため)。
そのため校長先生にも制服販売店にも事前に「スケジュールがもともと非常に厳しい中でのモデルチェンジ実行のため、間に合わせるように頑張りますが確約ができません」と伝えておきました。それ以外にも仕入先の突然の倒産や、規模縮小のための付属品廃盤もひとつやふたつどころではなかったですし、女子スラックスも話題にはなっても実際はあまり購入されない(選ばれない)のに昨秋頃に急遽導入を決定する学校が多くてその対応もありました。

そんな感じの問題が当社だけでなく全国各地であったイレギュラーな年だと各業者仲間から聞いています。その某制服販売店が同じ問題を抱えていたかは取引もないのでわかりませんが。他にもクラスターで工場操業停止や中国ロックダウンで海外製造をしていた業者分が国内工場になだれ込み大パニックetc.
原因を探せばいくらでもあるご時世なので。
幸い当社扱いでは、新入生分の冬物はほぼ完納(一部入学式直前直後に購入するパターンもある)しましたのでトラブルになるようなことはなかったですが、もし自社工場や協力業者でクラスターが起きて止まっていたら、廃盤の代替品がスムーズに入らなかったら、予備を多めに作ってなかったら…と考えるとぞっとします。

そんなスケジュールで仕事受けるなよ、というお声が聞こえてきそうですがそんな条件でも他に手を挙げる業者がいたら(というかいる、特に大手)すべて持っていかれるので。営業現場と製造現場がちゃんと連携し自社でまかなえる範囲をしっかり把握したうえで受注し、トラブルが発生した際の対応をしっかり事業継続力強化計画あるいはBCPで決めておくことが必要なんだなと改めて思います。この某制服販売店がそれらを策定されていたのかは分かりませんが、少なくとも遅延が確定した段階ですぐにお伝えしておくことはすべきでしたね。着日の見込がわからないとただ怒られるだけというのもわかりますが。カスタマーハラスメントがひどくて鬱になってしまう制服販売店さんもいますし

また、制服をユニクロ等の大手量販店の製品にすればいいという意見もありました。実際に今年から採用の学校もありますし。この考えについては当社としては懐疑的です。理由として仮に制服として採用されたアイテムがあった場合、そのアイテムの色違いを含めてを学生以外が着たいと思うのか?です。〇〇中学や〇〇高校と同じポロシャツとかジャケットとかを着ていたりすると「えーあのおじさんうちらの制服着てるんですけどウケる」と言われるんじゃないか?と…。ファッションアイテムは他人と差別化をするアイテムですが、制服はその逆で統一化するアイテムですから特定のイメージがつく扱われ方をされないようにするのではないかと思います。
じゃあ制服の専用モデル作れば?という意見もありますが、世界的な需要のないモデルではロット数が足りないかもしれないですし、某制服販売店みたいに追加製造が間に合わないあるいは追加製造しないかもしれません。学生のアイテムは売れ残ればメーカーが翌年までストックします。逆に流行・イヤーモデルのあるファッションアイテムの場合は値下げして売りきるのに制服だけは一年も倉庫に寝かせるのか?ちょっと考えづらいです。
もちろん世界的情勢でロシア国内での店舗閉鎖や中国のロックダウンもあったりとVUCAの時代のため絶対ではありませんが、せっかく(多分すごい巨額な予算で)世界的有名デザイナーとコラボを重ねて「ユニバレ」からの脱却していってるのに、今度は「学生が着る服、学生と被る服」のイメージに簡単に上書きされますから。
ただ本当にそうなのか?を試してみるのは悪いことではありません。何割がユニクロを買ってどんな感じだったのか?数年経ってどうだったのか検証結果は気になります。

VUCAの時代ですので新しい潮流もたくさんありますが「餅は餅屋なんだからしっかり餅作れ」ですかね。当社も近年はいろんな案件をふられますし、日々新しい潮流に乗れるようにアンテナ高くしておくようにしますが、本業をまずおろそかにせず新規案件いただいても「好事魔多し」で気をつけて取り掛かるようにします。
TOPへ戻る