平成28年度提出 『産み育てたい・住みたい街として必要な子育て環境創出』

はじめに

中部横断道は、物流や観光など静岡市の地域活性剤として期待が高まっているが、地盤のもろさや残土に含まれる重金属の処理等によって、残念ながら全面開通が2年先送りとされている。静岡市内でも、企業立地促進事業を進めている中、一刻も早い開通を願うところであろう。
 
その企業立地促進でPR資料として使用されている『H28静岡市企業立地ガイドBOOK ~Come on! Shizuoka city~』(産業振興課)には、物流、ビジネス拠点としての魅力と進出の際の市の助成内容が書かれているが、もう一つそれと同じ程度の大きさで『日本のまんなか静岡で暮らすと』と生活面についての魅力について書かれている。気候、防災、健康長寿、そして共働き子そだてしやすい街2015(地方編)ランキング第1位と静岡をアピールする内容が書かれているが、残念ながら最新の共働き子育てしやすい街 総合ランキング2016では以下の通り20位タイ、全国編(東京を除く)では6位となっている。
・調査名:「自治体の子育て支援制度に関する調査」
・調査対象:首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)、
中京圏(愛知・岐阜・三重)、
関西圏(大阪・兵庫・京都)の主要市区と全国の
政令指定都市、県庁所在地の162自治体
・実施期間:2016年9月~10月
・回答数:147自治体
※日経DUEL(http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=9518)より参照
 
今後、さらに子そだてしやすいまちとして認識されるための仕掛けづくりが必要と感じる。また別の記事では、
 
  県の推計によると、4月現在の静岡市の人口は70万3957人で、政令市では最も少ない。平成2年をピークに減少に転じ、国の推計では10年後に65万人、25年後に56万人まで減少する。減少幅は政令市で最も大きいとされる。出生率が県や浜松市より低く、15~24歳の若い女性と、40代の子育て世代の転出が多いことが課題だ。(産経ニュース2015.4.23記事より参照)
 
とあるように子そだてしやすいまちには特に女性に訴えかける部分が多いはずだが、その肝心の女性の転出が多いという状況である。
ファッション業界においては「メンズよりレディースのほうがトレンドは早い」「レディースを見れば1年先のメンズのトレンドは分かる」ということは言われており、つまりは女性側のほうが身の回りのことにアンテナを張っている人の数が多い。そんな男性より厳しく身の回りのことについて取捨選択している女性にこそ選ばれる、他自治体と見比べられたときしっかりとアピールできる行政のサポートが必要となる。
 
そこで我々は、静岡市に住むことでそれぞれの幸せを実現できる都市、そして平成37年に静岡市総人口70万人維持するという市の掲げる総合計画最大目標達成の為の一案として、子ども・教育分野の目標である『健やかで、たくましく、しなやかに生きる力をもった子ども・若者が育つまちを実現』するため、女性に選ばれるまちになるための方法を静岡市民そして若手経済人集団の感性をもって提言する。

提言

提言1 「すくすく子育て券」の発行による一律支援

子どもの年代に合わせ幼児期までのおむつ等の消耗品から小中高校生活で使用される学用品等の育児に必要な物品の購入に使える振興券としてすくすく子育て券を子育て世帯に配布することを求める。
子どもを育てやすい環境づくりを推進するとともに、市内の経済活性化に寄与する。
また支援が必要な時期の世帯に重点的にすくすく子育て券を配布するなど子育てのシーンに応じて配布していくことで、一時的な持ち出しが必要ない包括的な子育てサポートを可能にする。

提言2 「就学時の支援」必要性の調査

小学校、中学校、高校就学の際に用立てる学用品(制服・ランドセル・ジャージ等)については一時的に大金が必要となり、用立てることができずにお下がり等で済ませたりする場合も多い。私立校の場合は特定業者が一括で納品するためその業者には販売実数(景気動向)が見えるが、市立の場合は通常複数社が製造販売するためどの業者にも学校にも動向が見えない。
就学という出来事が実際どの程度家庭の負担になっているか、それをケアする他市と差別化した施策が検討するため、現状を知る必要がある。そのために新入学生入園児のいる家庭に対し、アンケートを実施することを求める。

提言の背景

1 子どもの貧困率といじめ

経済協力開発機構(OECD)が11月24日に発表した最新情報によると、ここ数年、所得格差は過去最高水準にあり、特に若年層(0歳~17歳)の貧困率は16.3%にのぼる。子どもの貧困は6人に1人と先進国でも最悪水準となっている。同じくOECDが行った別の調査で、子どもの暮らしに焦点を当て調査を行った結果、
 
裕福な家庭ほど子どもの健康状態が良く、学校生活も幸福であることが示された。また、裕福でない家庭の子どもは学校でいじめに遭う確率が高く、人生の満足度や読解・問題解決能力、両親とのコミュニケーションなどでも裕福な家庭の子どもに比べ低い結果となった。
(http://resemom.jp/article/2015/10/15/27376.html)参照
 
貧困世帯の子どもはいじめにあいやすいという結果が出ている。
その貧困の差がどういうところに現れてくるか。まず目につくところは、子どもの身なりについてである。特に小学校、中学校、高校に上がる際、ランドセルや自転車や制服等学校生活に必要な購入品が多く経済的負担が大きい。現行で静岡市には特定の生活困窮世帯向けの就学支援制度はあるが、そこには該当しない層の家庭でも、家計に余裕がないからということで、お古をもらって着ていく子の割合も多い。中にはバザー等で買った、もらった制服の袖に穴が開いているから片袖のみ付け替えて色違いになってしまっている、体操着など直接肌にあたる服に関しても汚れが染みついていたとしてもお古で済ませる、ランドセルは高価~安価と幅広く、新品でも格差がある等、入学の段階に揃える必要のある学用品を見るだけで、親の収入格差から連動した生徒間格差が激しいことが見て取れる。
 
学校とは公的機関であり、本来ランドセルや体操服などの学用品は各家庭の貧富の差を隠し、着用者が卑下することなく平等に教育の機会を与えられるため、合わせて制服はオフィシャルな場での服装マナー教育をする上でも必要不可欠なものである。静岡市の実態を把握し、それらを適切に揃えることのできるよう、行政でサポートする必要がある。
 
また本要望と似たような試みとして
 
・福井県坂井市による『多子世帯こそだてすくすく券』…5万円の商品券配布
(福井県坂井市 ホームページ参照)
・御前崎市による市独自事業の子育て世帯臨時給付金…3千円の商品券
(御前崎市 子ども・子育て支援事業計画参照)
 
このような子育て世帯に特化した独自の支援策がある。

2 支援状況と私費の実態

経済協力開発機構(OECD)は11月24日、2012年におけるOECD加盟国の国内総生産(GDP)のうち教育機関に占める割合などの調査結果をまとめた「Education at a Glance(図表で見る教育)」2015年版を発表した。日本が教育にかける公的支出は調査対象国の中で最下位だった。
(http://resemom.jp/article/2015/11/24/28122.html)参照
一方、就学前教育と高等教育における私費負担全体の割合をみると、高等教育の家計負担の割合は66.7%でOECD平均の31.1%を大きく上回っており、日本では教育に対する国や自治体の支出が少ないため、家庭での負担が大きくなっている実情が伺える。
(http://resemom.jp/article/2011/09/14/4187.html)参照
 
 この報告の通り、日本においては各家庭の経済状況が子どもの教育の質に直結している。
進学せずすぐに働きに出たとしてもその職場は大卒者に比べ、数も賃金も多いわけではなく会社の場合は学歴に応じて一定以上は昇進できない。貧困の連鎖を断ち切るのは教育が必要であると言われるが、裕福な家庭の子と比べ家庭のサポートが期待できない分、本人の一層の努力が必要になるという非常に厳しい状況におかれている。塾などの教育にかける費用はもちろんのこと、学用品についてはお祝い品としての観点があるため、祖父母からなどの金銭援助が入ることも多く、ランドセルなど価格差が激しいアイテムでは、特に各家庭の経済状況が反映されやすい。
 
また、現在の就学支援制度では申請から認定まで年度をまたぐ。静岡市教育委員会の平成28年度就学支援制度のお知らせ(http://www.city.shizuoka.jp/000709740.pdf)には、
「書類に不備のない場合、6月上旬に学校を通じ認否の結果をお知らせします」
「4月認定の新1年生に対する入学準備金の支給は7月です」
と書かれており、申請した家庭は一時的に持ち出しもしくは借り入れ等でねん出する必要があり、また認定基準となる収入の目安額以内でも認定されない場合があると記載されている。
準備金においては本来事前に利用したいはずで、物品購入時には手元にある必要がある。
入学準備金ではないが大分県由布市で以下の出来事がある。
 
市民オンブズマンなどによると、由布市の自営業男性(63)が1999年から3年間、国民健康保険税や市民税を約120万円滞納した。2010年末ごろ、当時の収納課の男性職員から庁舎窓口に呼び出され「サラ金発言」を受けたという。男性はその後、違法なヤミ金融業者に100万円を借り、全額を滞納税の返済に充てたが、金利分の借金が300万円に膨らんだ。借金は今年8月までに完済したが、市民税などを150万円ほど滞納している。2016/11/30付 西日本新聞朝刊
 
金銭的に余裕がない場合このようなことも起こりうる。その補助金が本当に子どものためのものになるか、貧困率が6人に1人というこの日本の状況で現在の就学支援制度が効果的に機能しているかを再考し効果的な支援方法を実践することは、他市と見比べたときに積極的に静岡市を選ぶ理由となりえる。

参 考 資 料

御前崎市による市独自事業の購入助成券
御前崎市による市独自事業の購入助成券