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『中古・お下がり制服』を着用する場合

お下がりの制服はいつもらう?

年度末~4月早々のタイミングで、『お下がりでもらった制服が手元に届いたが着てみるとサイズが合わない、というお客さんがきたので至急送ってほしい!!!』という依頼があり、それが年々増えてきています。
その時にそのサイズの在庫があればすぐにお出しできるのですが、毎回そういうわけにもいきません。
 もし無い場合は至急製造することになりますが、入学式まであとわずか数日というとどうやっても時間的に間に合わない!・・・という事もあります。実際3月~4月上旬は高校制服の追加製造でどこのメーカーも忙しいですし、「他店で買ってください」とお断りする販売店もあると
聞いています。
 
ちなみに入学式間近の制服販売店で納品予定のない商品を各サイズ潤沢に積んである事は稀です。そんなところがあったとしたら、資金力があるのかもしれませんが普通は(毎年そんな経営していたら)数年もたたず潰れてしまいます。また昔からよくある話、入学式の前日に買いに来た際に『時間がなくてお金下ろせなかった。いまは持ち合わせがないけど後日必ず払う。』と言って持って帰ったはいいけれどそのまま音信不通ってケース。
誇張ではなくて本当によく聞く話です。他にもせっかく急いで用意してもいつまでも取りに来ないので再度TELしてみると『ママ友からちょうどいいサイズもらえたからキャンセルで』なんて話もよく聞きます。
お客さんにとってみたらその1回だけのことかもしれませんが、販売店にとってみると何回もあることですからそういうのを毎年繰り返していると、警戒し断りたくなるでしょうね。
 
そんなことで新品が間に合わないとなると今持ってるお下がり品を着ていくしかない。ブカブカならまだしも、逆に小さくてどう体を押し込めても閉まらない!!となってしますと、入学式は出るのやめる、、、ファスナーやスナップは閉まらないので、安全ピンでとめて出席・・・なんてケースも結構あると聞いています。
中学校までは義務教育ですから、公私の違いはあれど子どもは皆中学校へ進みます。卒業式に着ていけば色々な進路があると一目でわかりますね
袖の長さも重要です
ちなみにお子様がMサイズの標準体型だとしてももらい物がSSだと着用できません。Sでも着れないか着ても身動きがとりづらいことになるかもしれません。大体同じくらいの身長だから大丈夫!と思っていても肩幅やバスト寸法は結構違っていたりします。お下がりをくれた子が身長で合わせるとLサイズだけどバスト回りがきついので3Lを着ていたりすることもあります。
 そのため制服の採寸(というか衣類全般)は現物試着が基本となっているくらいです。もらい物のサイズが合わない可能性はどんな体形の子でも起こりうる
事です。
 
制服はハレの日に着るお祝い服という使い方があります。
 成人式や結婚式に着用する振袖やドレス類、卒業式に着用していくレンタル袴と同じ役目を果た
します。
また制服は毎日着用する服であり、在学中の様々なイベントでも着用が求められ写真に残ります。
(指定制服があるのに卒業アルバムがレンタル袴という学校さんはさすがにないと思いますし)
 そして基本は在学期間しか着用できない、一生の思い出に残る衣服です
一部の地域では、小学校の卒業式には進学先の中学校制服を着用する学校さんもあります。
それで卒業するって実感と共にその次の進路について思いを馳せるんだそうです。
 
●●は着てても心は錦?

いえ外見は内面の一番外側になります。
 世の男性は昨今スキンケアをするようになり、大統領も化粧をしてテレビ映りを良くするすることで、自己PRする時代です。外見ひとつで周囲の反応も変わってきますのでとても重要です。
 
お下がりの制服をもらうのは卒業式後が一般的かと思いますが、お下がり待ちで新品を購入される予定がないのでしたら冬休みの時期などに事前に試着させてもらうなどして、サイズ(と汚れの有無)はしっかり確認されることをおすすめします。もらう子からしてみたら今後様々なシーンで着用する大切な一着になるのですから。

リサイクルショップの中古制服について

近年はリサイクルショップや校内バザーなどでも中古制服を取り扱うことが一般的になってきました。ですのでそういった所で購入される方もいらっしゃると思います。制服自体は最低3年以上もつというのが、そもそもの大前提ですので中古品であっても、3周目4周目とかのよほど年季の入った物でなければ大丈夫かと思います。
ただ注意しないといけないことがあります。
ジャケット等の上着やスラックス・スカートの場合は成長に合わせて袖出しや裾出しウエスト出し等の後加工されている場合が大多数です。
それ以外にもサイズ加工の手段はあり、呼称サイズと現物の寸法が異なるということも多々あります。
そして同じメーカーの制服で後加工無しの製品あっても、学校に意匠権のあるデザインならともかく、一般的なセーラー学ランが指定の場合は、ある程度時代に合わせて、またはより研究が進み、シルエットやエリの大きさ等のパターン(型紙)をよりきれいに見えるように調整している場合もあり、そうなると、リユースならではの使用感と相まって野暮
ったく見えることもあります。
中古屋さんで同じサイズの買い足しをする場合でも、試着できる場合は絶対試着してから購入してください。
具体的な例では、昔から同じ感じで代り映えのしないように見える全国どこでも着用されている一般的な学ランでも、数年前のものと比べると現在製造しているものは、どのメーカー製でも現代っ子の体形や好みに合わせてスリム化していたりします。

女子制服のセーラー服でも、衿を小ぶり化すると共に全体的にスリム化してジャストサイズに近い物を好んで着用する傾向にあります。
もちろん学校オリジナルデザインであればパターンが微調整される可能性は低いですが、それでも基本中古制服については完全に1点物の認識で着用者に必ず売り場までついてきてもらい、現物試着しサイズ確認をしっかりした上でご購入される必要があるを念頭に置くことをお勧めします。

付加価値機能について

制服には各メーカーや紡績会社のイチオシの付加価値機能が付与されていることが一般的です。
マシンウォッシャブル=家庭洗濯はポピュラーですが、それ以外にも抗菌・制菌・防臭・撥水・撥油・透湿性・防汚・帯電防止etc. 本当にいろいろな機能があります(こちらのページに当社使用生地掲載しています)。

これらの付加価値の中には、洗濯等によってだんだんと効果が薄れてくるものもあり要注意です。
抗菌・制菌なんかではSEKマークの認証があり、これは(社)繊維評価技術協議会が、「使用する加工剤と製品」の両面から安全性と性能を評価する試験を実施し、両方共に基準に達している製品ということです。
この認証を受けるには耐洗濯持続回数も重要で、一般用途の抗菌防臭加工および制菌加工では最低10回洗濯後も効果が持続する必要があります。ということはそれ以上の洗濯を繰り返している場合に、機能は新品と比べて著しく低下している可能性があるということですね。ただ中古ですから、機能を謳ったラベル等もないでしょうし特に問題はないとは思いますが、目に見えないところでも機能差というものがある点ご注意ください。
お譲り物等で『これ抗菌ってことで買ったやつだから!』と言われていたとしても、それはその方が購入された当初のことです。一方で、スーパーセルボニック加工のように非常に高耐久の機能もあります。

この辺りは、前のご家庭がどのようなメンテナンスをしていたかで付加価値機能の残存性能も変わるので、現品ごとに判断するしかありません。

『中古・お下がり制服』で起こった出来事

ケース1.
以前某高校の先生に
『中古制服を購入することはそれぞれ家庭の事情なので踏み込むことはないが、旧型仕様を売っているのは何とかならないものか。』
というご意見(嘆き?)を聞いたことがあります。
その学校は数年前に服装指導を徹底するため、ネクタイなどを緩めて付けないようゴム式をホック式に改めたという経緯がありました。しかしながら学校と売買契約を結んでいないとある中古制服販売店さんでは、古い規格の中古ネクタイを売っているそうで、知らずにそこで購入する保護者もいるそうです。
仕様が異なるのは明白なので
『中古屋で購入したそのゴム式ネクタイは今の学校の物とは仕様が異なるので付けてこないように』
と指導しているとのことです
 
 
※中古屋さんが仕様変更を把握しているかどうかはわかりませんが、その学校付近で中古を売っているのは1店舗だけではないとのことです。違反生徒がいたら指導し、購入したお店を聞いて連絡するようにしているそうです。返金に応じるか&古い仕様の制服を販売しないようにするかはそのお店次第なのでなんともいえませんが。
ケース2.
近年は純毛(ウール100%)でドライ指定の素材を、見た目は同じのウォッシャブル素材に仕様変更する学校が増えています。見た目のイメージは踏襲しつつも素材とパターンは現代に合わせてブラッシュアップ!というよくあるモデルチェンジの手法です。そんな感じのモデルチェンジをしてから数年程度経った学校制服で、
 
中古で買ったorお下がりでもらったドライクリーニング指定の旧制服を、新素材のものと同じように(学校で配られた手引きには洗えると書いてあったので)家庭洗濯で毎週末洗濯を繰り返していたら、縫い目が裂けて(パンクして)きた

…という問い合わせが何件かありました。
 中古制服は新品と異なり、モデルチェンジした・しないに関係なく事業者に廃棄されるまではずっと店頭に並ぶ可能性があります
 
 
※ちなみに家庭の洗濯機にも『ドライコース』という文言がある場合があります。多分、それは洗濯槽をあまり動かさずに、短時間弱水流で洗う方法です(他におしゃれ着洗い、手洗い等の名称もあります)。
一方クリーニング屋さんのドライコースは、水ではなく専用の溶剤を使って洗う方法で家庭で真似できません。ですので洗濯表示にドライ指定がある場合は必ずクリーニング屋さんに出す必要があります。制服の場合、ドライ指定の服を数回洗濯したくらいでダメになる可能性は低いですが確実に生地に少なくないダメージを与えていますので、必ず洗濯マーク記載の方法でお手入れしてください。
※ジャケットやジャンバースカートなどの嵩張る大きいものは特に洗濯機の中でよじれます。必ず洗濯ネットに入れてください。
 ※縫い代がちゃんと残っているかは製品をバラしてみないとわかりません。ドライ指定の場合は、端をロックミシンで処理していないこともあるので、洗うたびに少しずつ抜けていき縫い代が短くなりある日突然裂け目が…なんて話はよく聞きます。見頃等芯地を貼り付けるパーツはロック処理していなくても大丈夫ですが。
 
過去どのように使用されていたかは、外面に出ている箇所だけで判断できるわけではありません。
長年制服を変更していないように見える学校でも、細部を変更していることもあります。
経済面及び地球環境保護の観点から、新品でない制服を活用することに多々有益な面はありますが、その一方で上記のような中古・お下がりならではのトラブルが発生する場合もあります。

 
それがご自身の身に起こらないよう、確認された上でご使用されるようお勧めします。

『2周目』『3周目』・・・

ちなみに当社内では、新品でない=中古の制服を『2周目』『3周目』…と呼んでいます。
呼び名で大体想像がつくと思いますが、
3周目制服
3周目のお直し依頼(学ラン衿の白テープ補修)
2周目 ➡ もらい物(お下がりなので着用4年目)
3周目 ➡ もらい物をもらった物(お下がりのお下がりなので着用7年目)
4周目 ➡ お下がりのお下がりのお下がり
以降続く
※新品制服は特に1周目とかいう言い方はしていません
※4周目なんて(笑)と思われるかもしれませんが、長年仕様が変わっていない学校ではまれにあります
といった感じです。
2周目まではまだ比較的きれいな品があります。ただ、3周目以降はシミも多くほころびもありちょっと着用はお勧めできない状態が大半です。どうしても生地は日焼けしますので、2周目の制服でも袖を付け替えると色が違ってしまう場合が多々あります(当社ではビンテージ加工はしていません)。
 
ちなみに2周目と3周目の区別は単純な見た感じです。
 
2周目の制服は(最初の着用者家庭は)新品で買ったということもあって、大事に使われただろうと推察できる程度の使用感です。それをもらってきたor購入したので、少しセーラー服のカフスのほつれ(勉強頑張ったんだろうねの跡)を直したり交換すれば全体見た目そこまでそん色なしといった感じです。
カフス程度であれば、日焼けの色差はそこまで気にはなりません。
?周目制服
何週目かわかりませんがウエスト、サイズ直し(キズ補修とは関係ない)修理依頼
ただ3周目以降の制服は『どうせ中古だから…お下がりだから…』という認識があるからでしょうか?乱雑に扱っているんだろうなぁと推察するような痛み方やシミ等多数。新品と2周目は扱われ方も違うんだろうね、、、と安易に想像できてしまうくらい(製造品番を確認せずとも)簡単に判断がつきます。
 
制服は3年間着用が必須という大原則のもと製造されているので、通常のアパレル衣類よりも基本的に耐久性があります。シャツ地なんかも打ち込み本数も多いので大人のドレスシャツよりも全然高耐久です。日頃ちゃんとお手入れをして大事に着用していただけるのであればお下がりであっても、4年目以降もきれいを長持ちさせることもできるのですが…
 
あくまで、当社に届いたお直し依頼を見ての感想ですので全てに言える事ではありません。
ご参考程度に。

なお、当社(片山衣料)では中古品の販売は行っておりません。
上記写真は、当社が納品した販売店依頼(新品を購入されたお客様が制服を破損した際のリペア作業)です。購入者へのサービスとして、無料or格安でリペアやクリーニングを行っている制服販売店は多いですが、古物商免許を持って中古品を販売している制服販売店は、当社の知る限りでは多くないかと思います。

「サスティナブルファッション」に関する 消費者意識調査について

令和3年度に消費者庁から「サステナブルファッション」に関する消費者意識調査が発表されました。

調査期間 :令和3年7月20日(火)~7月26日(日) 
調査対象者:全国の15歳~69歳の男女2,000人 ※性別、年代別、地域別による割付あり 

これを見ると、衣服の保有枚数は「10~50着未満」が48.6%で一番多く、次に「50~100着未満」が16.3%で続いています。男女別に見ると女性のほうが保有枚数が多いという結果です。

古着への抵抗感は、
男女とも、古着について「まったく抵抗感はない」と「あまり抵抗感はない」と回答した割合は3割程度、
「やや 抵抗感がある」と「強い抵抗感がある」と回答した割合が5割程度だった。
古着の購入については特に年齢層の高い女性では「強い抵抗感がある」との回答の割合が高く、年齢層が高くなるほど抵抗感があるとの回答の割合が高まる傾向にある。
とのことです。

また、古着の購入促進に向けた要望では
「古着を購入する人が増えるためには、どのような取組が必要と感じますか」との質問では、
「よい状態の古着だけを販売する」「できるだけ低価格で販売する」「デザインやサイズの品揃えをよくする」との回答の割合が高い。
一方、要望が「特になし」との回答の割合も高い傾向にある。
とのことです。

学校制服で広く使われているウール混率の高い織物生地の高耐久性は、過去数十年間分の実績で証明しており、お下がり(中古)制服も多く出回っていますので、十分サスティナブルファッションとしての要素を備えていると思います。ただ近年は価格の安いポリエステル100%素材や、ストレスフリーのニット生地素材等の新素材でできた制服も全国各地で採用されています。こういった素材がそもそも3年間きれいに着れるか?(良い状態の古着以前の話)について業界内で不安視する声はあります。

今後サスティナブルファッションの潮流は制服業界にもどんどんと浸透していくとは思います。そうなったとき新素材制服にも、
  • いかにきれいな状態・風合いをローメンテで維持できるか(高耐久)
  • 高度なリペア技術とそれを請け負う会社(お直し屋さん等)が学校周辺にあるか
が求められるのではないかと思います。
(古着の購入促進に向けた要望に対する回答で43.5%も「良い状態の古着だけを販売する」としています)

もちろん高耐久の実績があるウール混織物生地でも、着用者の扱い方(自転車で転んで破けた等)や「3周目」の場合はお下がり(中古)制服として使用するにはちょっと…な状態のものになる事が当然ありますが。

未来に向けては、学校制服(他社会人のスーツ類)が元々持っているサスティナブルファッションのアイテムとなり得る要素をより深化させ、リペアのみならず全素材リサイクルできるようにしていくシステム構築を併せて進めていく必要があると考えています。
もらい物、リユース品は1点物です。制服の場合はサイズ別注や裾出し等後加工している可能性が高いので現物合わせが必須です
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