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「いとへん」業種の課題と取り組み

国内小ロット多品種短期対応と大量生産のファストファッション

「糸偏(いとへん)」ともいわれる繊維業界は一般的に給料が安いといわれています。
また縫製工場は機械化は進んではいますが、未だ多くの安いマンパワー(縫製スタッフ)が必要な業種です。
そのため2013年のラナ・プラザのビル崩落事故のような、世界的なファストファッションが劣悪な労働環境や安価な労働力を利用し、低価格と大量生産を実現してきたという社会的問題をこの業界は抱えてきました。
さすがに現在はラナ・プラザのような劣悪な環境は改善の方向…と信じてはいます。
ただ原材料に関して、現在も新疆ウイグル綿の強制労働疑惑が取り沙汰されています。

一方日本国内需の学校制服産業は、国内産業として小ロット多品種対応で売り切れ厳禁、3年間はキレイに着用ができる品質の物を入学式まで全員に間に合うように納品、という条件に対応し頑張っておりますが、前提条件の異なる大量生産のファストファッションと価格だけを見比べて「高すぎる」と批判をされています。
学校制服は毎年一定の品質を求められるからこそ、数十年もかけてファッション衣類との品質と価格差が目立つようになってきているのではないかと思いますが。
また近年は制服のモデルチェンジが相次いでいます。時代に合わせ、あるいは最新素材に適宜アップデートすることは必要な事ですが、その仕様が小規模校であっても、こだわり満載の唯一無二な仕様であったり、ただでさえ少子化で生徒数が減る見込みに輪をかけてLGBTQのような小ロット対応を新たに求める一方で、価格については現行品を超えないもしくは現行と同程度と上限が先に設定されます。
1デザイン、1校あたりの製造にかかる原価や在庫リスクが明らかに増していても、卸価格も販売価格も低くせざるを得ません。
結局のところ、縫製という技術職も、販売というサービス職も「安い仕事」と値踏みされているのが現実で

『価格=労働や材料にかかる費用を積み上げた上で適正な利益を計上する』

という当たり前のことも中々聞き入れていただけません。途上国からの輸入コーヒーならばもはや常識でもある「フェア トレード」の考えは、国内需の学校制服業界においては一部の理解校を除いて未だに希薄ともいえる状況です。

課題解決に向けた取り組み1 工場の多能工化(対面接客サービス)

そのため当社では『縫製』の価値向上と技術力維持と共に、縫製工場2.0として進化するために様々な付加価値を模索しています。当社ログインサイトもその一つであり、当社のスタッフが基本縫製工でありながらも過度な負担をかけずに当社契約直売校の制服採寸販売を行うことができるようにするための多能工化ツールという役割を持たせています。

入学シーズンが近づくと制服の採寸会を実施します。そこには当然縫製スタッフも参加し、自らが手がけた製品を自ら保護者におすすめし試着する子の姿を見る。ヒューマンエラーが発生しやすく時間もかかる計算が必要な集計業務は、全てサイトが機械的におこなうので対面でのアドバイスに集中できます。それによってミシンの前での「ものづくり」だけでは体験できない接客(作り手と買い手のコミュニケーション)が無理なく出来ます。

コロナ禍に入ったあたりから画像を読み込みサイズ判定する自動採寸機能が次々に出てきましたが、当社は人と接するコミュニケーションの場であり体験(トキ消費)の場でもある採寸会(もしくは試着の機会)の『重要度は高い』と考えています。というのも、心が切り替わるのは実際に次のステージの第二の皮膚を身にまとう&まとった姿を見る時です。当社の採寸会場では人数制限等で参加できない祖父母やお父さん方と後々相談するために、七五三の衣装仮合わせのように写真を撮っていく保護者様も増えてきています。児童数減が今後も進む現代だからこそ、よりお子様ひとりひとりの成長に寄り添い家族皆で育児を行う。学校の行事にも積極的に参加する光景を見ることが多くなってきていると感じています。
コロナ禍が終われば、また以前のようにご家族で採寸会にお越しになると思います。

自動採寸は、すべてを機械的に済ますことで人件費もかからず会場費等もいらず効率的ではありますが、便利の押し付けが着用者様を中心としたコミュニケーションの機会を奪ってしまう可能性があります。当社においては『不便益』も考慮した上でDX化(Digital Transformation / デジタルトランスフォーメーション)をすすめ、ご家庭の学校行事の一つ(ハレの日のお手伝い)を快適に体験できるというベネフィットを追求していきます。
それとともに、社内スタッフひとりひとりの仕事のやりがい創出と、産業競争力の強化をはかり、今後も雇用の継続・創出に努めていきます。

課題解決に向けた取り組み2 チップ文化と「ごちっぷ」導入について

2021年末時点、日本国内においてチップ文化を広めようという動きがあります。海外の飲食業やホテル業では一般的ですが、コロナ禍で大打撃を受けた国内の飲食業界においても少しずつ注目されてきているようです。
チップの他にも、クラウドファンディングや差し入れ・投げ銭機能などの類似するサービスは様々ありますが、なかでもクラウドファンディングについては既に一般的な認知度はとても高いかと思います。

当社の場合は、お子様ひとりひとりが入学前から卒業を迎えるまでのロングスパンにおける継続的なサービスの提供を目的としていますので、導入するにはごちっぷ株式会社提供のごちっぷ(チップ機能が最適と考え導入しています

当社の業務で飲食店舗のようにスタッフとお客様が接する機会こそありますが、仕組上その場でのお支払は発生しませんし、かといってサイト上にチップを送るスタッフ氏名や顔写真を掲載することも憚られます。そもそも当社のような衣類製造卸と一部直売のサービス形態に、チップという方法がマッチするかはわかりません。
ただ当社としては、今後も製造機能を維持しつつ小売機能を拡充していき多能工化と仕事の中にやりがい創出を組み込んでいくことで、「片山衣料で働きたい」「引き続き片山衣料で働きたい」と思い続けていただける会社になるための取り組みの一つ、と位置付けています。

ごちっぷは当社が提供しているサービスに対してが主となるかと思いますが、もちろん強要ではありません。
また仮に当社サービスを利用していなくても当社の方針に共感を持っていただける方がいらっしゃいましたら、ぜひ応援の意味を込めごちっぷをお送りいただければ幸いです。ごちっぷによる収益は、スタッフに係る費用(福利厚生や賞与)としてスタッフの目に見える形で使用させていただきます。

課題解決に向けた取り組み3 グローバルに展開するIPへ

事業やサービスは、どんな良い物であっても時間や新しい考え方の普及によって淘汰されていきます。
当社が製造するセーラー服も、ジェンダーフリーという新しい考えの普及によってじわじわと淘汰が進んでいる状況です。この流れは不可逆的ではありますが、価値感アップデートのチャンスでもあり、そのヒントは着物にあると考えています。

日本では明治5年(1872)11月12日に「礼服ニハ洋服ヲ採用ス」という太政官布告で日本古来の服装から西洋の礼服に切り替わり、この時点から着物から洋服への不可逆的な流れが始まったそうです。そして現在、着物はどうなっているか?というと、もちろん普段着という市場の規模はかなり縮小しているでしょうが、冠婚葬祭等に着用するハレの日の需要はしっかり残っており、海外客インバウンド需要や輸出事業もされています。
文化を伝承しつつもビジネスモデルを作り直し、価値観のアップデートを行って時代に合った製品やサービスを提供することで着物というIPは現在も存続しています。
国民大多数の服装が切り替わるまでのおおよそ明治から昭和初期まで、戦後に本格的に洋服に切り替わってから現在に至るまでの数十年間、着物離れが進む中で業界で働く方々は危機感の中で模索されてきたと思います。

そして淘汰が進みつつあるセーラー服ですが、IPコンテンツとしてセーラー服のポテンシャルはものすごいものがあり今後は希少価値も高まると考えています。その理由として、元々アニメ・ゲーム・小説・映画などに取り上げられるジャパンカルチャーとして世界的にも認知度が高いアイテムですが、需要減や後継者不足による廃業により制服のクオリティを持ったセーラー服を製造できる工場数がどんどん減少している点です。
実際に、海外からの当社サイトを見つけて日本語以外の言語でお問い合わせをいただくケースは多々あり、そこから自由制服としてご購入いただき輸出、後日お礼のメールを頂いたケースも何件もあります。

日本の制服文化は、着物の事例のように時代に合ったサービスにアップデートすることで「原価積み上げ方式」や「競合との調整方式」ではなく「当社が提供するサービスの質=付加価値」として全世界に提供できるのではないか?、と考えています。
当社はこの分野においてこれまでの文化を伝承しつつも、別途新しい文化の創造に向かって、時代を先駆け歩を進めるよう取り組みを続けていきます。
※IPとは「知的財産」を意味するIntellectual Propertyの略語。
クリエイティブな活動によって生み出されるアイデア・創作物などの、知的財産として価値をもつもので、著作権、特許・商標、小説・映画・アニメ・ゲームなどのコンテンツとそのキャラクターがIPの代表例で、日本発のIPは2次・3次創作も非常に盛んで、プロアマ問わず多くの作家
(クリエーター)が草の根的に活動しています。
人口減少で縮小する国内市場のみならず、グローバル市場で活躍できる可能性がIPにはあると考えています。
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